従業員が精神疾患(『うつ病』など)にかかってしまった!!解雇するべきか?それとも復職支援を頑張るか?どうすればいいの・・・!?

「昨日、病院に行ったら『うつ病』と言われました。医者から休職するようにと言われましたので、明日から休職します」

…ある日突然、休んでいる社員からメールが来ました。

「明日から休職と言われても、あの頼んでいた仕事はどうなっている?
 …いやいや、そもそもうちの会社には、休職なんて制度あったのだろうか?」

そこで、いつもは、誰も見ることのない古めかしい就業規則を見てみると、
「休職制度」は確かに書いてあった。「勤続1年以上は1年6か月とまで」と。

そのうえ、医師からの休職命令が出ている以上、無理に拒否すると責任が発生するような気が…

でも、そんな重要なことをメールで伝えるというのは、礼儀的にどうなのか?
というのは気になりましたが、結局、病気と言うならしょうがないと思い、休職を許可しました。

しかし、1か月・2か月といつになっても、何の連絡もなく、治ったという様子もありません。

そこで、3カ月目に一度、その社員を呼び出して、会うことになりました。

その時に、
「治療に専念するために、一度今月末で退職しませんか?」と、
話をしてみました。

彼は「考えさせて下さい」と言ったので、その後数日、待っていました。

しばらくしたある日、
突然、弁護士から「不当解雇・残業代請求」という内容証明が送られてきて驚きました。

会社としては、解雇なんて一度も言ったことはないのに…
そこで、森さんのことを思い出して、相談に来たんです…

非常に切実な悩みですよね。上記の内容は、もちろん守秘義務のため手を加えたフィクションですが、
弊社に相談にいらっしゃるケースは、上の事例に似たものが非常に多いです。

ちなみに一見、会社側の方が被害者のように見えますが、権利・義務としてみるとどうなのでしょう?

休職中の社員の権利と会社の義務
社員の権利
(1)休職制度がある以上、社員は休職制度を利用する権利がある。
(2)休職中は、仕事は免除され、原則その間の行動は社員は制限されない。
(3)おおむね給与額の6割程度の傷病手当金の支給を受けることができる。
会社の義務
(1)休職中であっても、会社負担分の社会保険料は支払わなければならない。

そんな状況下において、企業はどのような対策をしておくべきなのでしょうか?

もちろん、社員から『うつ病』患者を出さないよう、予防するのが一番です。
ですが…万が一のことも考えて、対策をしておかなければ、どのような損害があるか計り知れません。

特に最近は、大企業ではなく、10人未満の会社も含めた中小企業の経営者の方からの相談が多い傾向にあります。
中小企業にとって、スタッフ一人の休職中の負担と不当解雇の賠償金は、死活問題になることも少なくありません。

そこで、社員から『うつ病患者』が出てしまった時の正しい対応方法と、
『うつ病』の簡単な予防方法をこのページでは紹介します。

森 紀男

ソフィア特定社会保険労務士法人代表 森 紀男

企業における「人」に関するトラブルを解決するためのコンサルティングを専門とする特定社会保険労務士。

法的なアドバイスはもちろんのこと、現場に基づいた具体的な対応策に定評がある。
長時間労働による精神疾患が多くみられるシステム開発会社や、映像制作会社などにおいて、
トラブルを拡大しない休職のアドバイスのほか、行方不明になってしまった社員への対応など、同種の士業としては珍しく、自らトラブル解決のために現場に赴くことも多い。

また、中部生産性本部、愛知県経営者協会などにおいてコンプライアンス・リスクマネジメント管理、人事労務管理等における経営者向けのセミナーや、
各地域の社会保険労務士会などの専門家向けの研修の依頼を受け講義を行うなど、行動分野は多岐にわたる。

  • ・公益社団法人全日本能率連盟マスター・マネジメントコンサルタント
  • ・株式会社スタッフコンサルティング 代表取締役
  • ・ソフィア特定社会保険労務士法人 特定社会保険労務士
  • ・株式会社ソフィア電子センター 代表取締役
  • ・さわやか行政書士事務所 行政書士
  • ・㈱日本コンサルタントグループパートナーコンサルタント
  • ・経営法曹会議賛助会員

以前は、『うつ病』対応のご相談としては、いわゆるIT企業が多かったのですが、
最近は、業種を全く問わずご相談があります。

また、その会社が、80時間100時間の残業をさせていたかというと、そうではないことが多いです。
ご相談にいらっしゃる経営者さんに共通する考え方は、次のようだということです。

●「うちの会社の人数では、『うつ病』なんか関係ない」●「めったにある話しではないから、『うつ病』なんか関係ない」●「うちはそんなに厳しくしていないから、『うつ病』なんか関係ない」

しかし、それらには関係なく、私たちからみれば、本当によくある話です。
ですので、まずは企業として、会社を守るために取るべき基本となる対策をご説明しますね。

『うつ病』に対する基本的な対策

万が一、『うつ病』など、社員からメンタル不調者が出てしまった場合には、
あわてず、必ず次の手順を踏んでください。
これがないと、あなたの会社を法的に守ることが難しくなります。

ポイント1.本人の申請だけでは、判断しないこと
必ず、医師の診断書の提出を求めましょう。
できれば、本人の主治医だけではなく、産業医など会社と関係があり、業務の実態を把握し、かつ専門医であることがベストです。
50人未満の会社では、産業医の選任義務はないため、中小企業では産業医がいないことがほとんどですので、あらかじめ会社として『診断書を取ってもらう病院を決めておく』のも良い方法です。
※産業医に委託していたとしても、その産業医の専門が、精神疾患の専門ではないことが多くあるため注意が必要です。
ポイント2.いつまでの休職であるか書面で取り交わすこと
最も重要なのは、いつまで休職となるのかということです。
多くの休職規定の場合、○年や、○月という表記がありますが、具体的な何月何日までという期限を決めて休職を許可することが少ないようです。
休職制度の適用を行うのであれば、終了日をきちんと決めて、契約しておくことが重要です。
ポイント3.復職の条件を明確にしておくこと
よく見けられるのは、「休職理由が消滅したとき復職とする」という規定です。
しかし、「休職理由が消滅する」というのは、どういう状況でしょうか。リハビリ勤務ができる状況なのか、完全に仕事ができる状況なのか大きな違いがあります。
もし、復職できず退職(解雇)処理をすることになると「休職理由が消滅しない」具体的な内容は、つまり、裏返すと、解雇の条件でもあるのです。
したがって、最低でも休職に入るときにお互いに明確に確認し、出来れば書面で契約しておく方がよいでしょう。

もし、すでにトラブルが発生しており、上記3点の対策をしていない場合、下記より一度、状況をご連絡ください。
対応可能な方法をお伝えいたします。

※時間が経過するにつれて、対策を講じるのが難しくなります。一日でも早くご連絡ください。

とはいえ、会社にとって、社員は重要な財産です。
ですので、「正当に解雇できればいい」という話でもないでしょう。

その社員がやっていた業務を穴埋めし、軌道修正をするのは大変な労力は必要になります。
さらに、担当業務によっては、資格の再取得を要するなど多大なコストがかかることも少なくありません。

ですので、「『うつ病』になったらどうするか」よりも、
「『うつ病』にならない職場環境をつくる」意識が大切です。

そして、『うつ病』など精神疾患の予兆を感じたならば、「間違った対処をしない」ことが重要なの です。

ですので、ここからは、

「『うつ病』などの精神疾患を予防するポイント」と、
「『うつ病』の予兆がある社員にやってはいけないこと」

をお話ししますね。

『うつ病』などの精神疾患の予防のポイント

『うつ病』は病気ですので、100%予防するというのは大変難しいことです。

ですが、睡眠時間が短い人の方が、『うつ病』にかかりやすいなどの傾向は明らかになっていますので、職場で改善できるところは改善しておくのが好ましいといえます。
まずは、下記の点がポイントができているか確認し、できていないようでしたら、改善を試みて見てはいかがでしょうか?

ポイント1.睡眠時間を7時間前後はとれるような状況をつくること
長時間労働がよく取り上げられていますが、労働時間の問題だけではありません。
大切なのは睡眠時間の「長さ」と、「質」です。
例えば、仕事としてはあまり長くなくても、通勤時間が2時間の場合、往復4時間1日の時間を消費することになり、結果として睡眠時間が減少してしまいます。
そのような場合は、通勤時間を考慮した残業時間を設定する、あるいは、会社の近くに住んでいれば、住宅手当を増やすなどの対策を講じても良いかもしれません。
ポイント2.趣味がある社員を増やすこと
趣味があるということは、仕事だけではない個人の時間を持っているということです。
ですから、自分が自由に使える時間がある=時間&精神に余裕があるといえます。
精神的に余裕がなくなれば、趣味に没頭することもできなくなる傾向があるようです。
ですので、反対に、趣味を持っていた社員が最近趣味の話しをしなくなったときは、注意が必要です。
ポイント3.会話がある職場をつくること
毎日話をしていれば、社員のちょっとした変化に気付くことができます。
逆に、業務の中で会話がないと、社員の状況を把握することが難しくなります。
「上司が、社員の髪型が変わっているのにも気づかなかった」ということがない程度に、簡単な雑談があるような状況が大切です。

しかし、先にもお話しした通り、『うつ病』などの精神疾患は病気ですので、100%防ぐことはできません。

ですので、「ポイント3」などを通じて、社員が『うつ病』等の精神疾患ではないかと感じた時には、
次のことに気をつけましょう。

『うつ病』の傾向がある社員にしてはいけないこと

「『うつ病』等の精神疾患にかかった社員にしてはいけないこと(言ってはいけないこと)は○○です」

よく、メンタルヘルスの労務管理に関する書籍に記載されていることですが、おさらいしておきましょう。

もちろん、ひどい言葉などは言ってはいけませんが、一番やってはいけないことは、
『経営者や、人事担当者が「ケアをしよう」「治そう」とすること』であると考えています。

『うつ病』が疑われるということは、『病気』が疑われる状況であるということです。

したがって、医師でない経営者や、人事担当者が治そうとすることは、とても危険なことです。
体に大きな傷を負った社員を、人事担当者が本を見ながら、治療するのと同じくらい危険です。

体の傷であれば、まずは救急車を呼んで病院に搬送するのが一般的でしょう。

もちろんメンタル不調に関して知識を増やすことはよいことです。
ですが、それは、簡単な擦り傷に応急セットから絆創膏を貼るくらい、という意識にとどめておきましょう。

例えば、人事担当者がカウンセリング技術を学んで、不調を訴えるような社員にカウンセリングを行うことは、病気を悪化させる恐れさえあります。

治療行為は、専門の医師に任せるべきであり、会社の人間が入っていくべきではありません。

『うつ病』などの精神疾患のトラブルで現在お困りの方はもちろん、今後に向けて、
トラブルを防ぐ体制を築いていきたい方は、下記よりお問い合わせください。

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